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バイト代で投資デビュー? 高校生 が知らなきゃ損する(かもしれない) 投資の失敗パターン

高校生の投資、興味はあるけど「デメリットや失敗が怖い」と感じていませんか?この記事を読めば、バイト代で投資を始める高校生が陥りがちな5つの具体的な失敗パターンとその原因が分かります。知識不足や甘い誘惑、焦りによるリスクを理解し、大切な資金を守るための注意点が明確になります。投資で後悔しないために、始める前に知っておくべき落とし穴と、失敗を避けるための心構えを学びましょう。

1. その投資、本当に大丈夫? バイト代で始める前に知っておくべきこと

最近、ニュースやSNSで「投資」という言葉を目にする機会が増え、高校生の間でも「投資を始めてみたい!」と考える人が増えているかもしれません。コツコツ貯めたバイト代を元手に、将来のためにお金を増やしたいと思うのは素晴らしいことです。しかし、投資には魅力的な面だけでなく、知っておかないと大きな失敗につながる可能性のあるリスクやデメリットも存在します。 特に、社会経験の少ない高校生にとっては、注意すべき点がたくさんあります。

軽い気持ちで始めてしまい、大切なバイト代を失ってしまったり、思わぬトラブルに巻き込まれたりする前に、まずは投資の「光と影」をしっかり理解しておきましょう。この章では、高校生が投資を始める前に最低限知っておくべき基本的な心構えや注意点について解説します。

1.1 高校生が投資を始めるメリットと、それ以上に知っておくべきデメリット

投資を始めることには、確かによい面もあります。例えば、経済の仕組みに興味を持ったり、お金に関する知識(金融リテラシー)が身についたり、早い段階から将来に向けた資産形成を意識できるようになったりするかもしれません。

しかし、メリット以上に、高校生が投資を始める際には注意すべきデメリットやリスクが多く存在します。 これらを理解しないまま始めてしまうと、取り返しのつかないことになる可能性もあります。

主なデメリット・リスク具体的な内容
元本割れのリスク投資したお金(元本)が減ってしまう可能性があること。銀行預金とは違い、投資には元本保証がありません。 最悪の場合、投資したお金がゼロになる可能性もあります。
知識・経験不足による失敗投資の仕組みやリスクを十分に理解しないまま始めてしまい、損失を出してしまうケース。「なんとなく儲かりそう」という安易な判断は非常に危険です。
詐欺や悪質商法のターゲットになるリスク「必ず儲かる」「簡単に稼げる」といった甘い言葉で誘い、高額な情報商材を買わせたり、詐欺的な投資話に巻き込んだりする悪質な業者が存在します。 SNSなどを通じた勧誘には特に注意が必要です。(参考:金融庁 金融トラブルにご注意。
学業への影響株価の値動きなどが気になりすぎて、勉強に集中できなくなったり、睡眠不足になったりする可能性があります。 本来の学生生活とのバランスを崩さないことが重要です。
手続きの複雑さ・ルールの理解不足未成年者が投資を始めるには、原則として親権者の同意や特定の書類が必要になります。 ルールを知らずに手続きを進めようとして、トラブルになるケースもあります。(参考:日本証券業協会 未成年者の証券投資について
税金の問題投資で利益が出た場合、原則として税金がかかります。 非課税制度(ジュニアNISAなど)もありますが、その仕組みやルールを理解しておく必要があります。

1.2 投資を始める前に持つべき「心構え」

投資の世界に足を踏み入れる前に、いくつか大切な心構えがあります。これらを意識するだけでも、大きな失敗を防ぐ助けになります。

  • 投資はギャンブルではない: 投資は、企業の成長や経済の発展に貢献し、その対価としてリターンを得ることを目指すものです。一攫千金を狙うようなギャンブルとは根本的に異なります。 リスクとリターンは表裏一体であり、「ローリスク・ハイリターン」のようなうまい話は存在しないと心得ましょう。
  • すべては「自己責任」: 投資の判断は、最終的に自分自身で行う必要があります。たとえ誰かのアドバイスに従ったとしても、その結果(利益が出ても損失が出ても)責任を負うのは自分自身です。 人のせいにすることはできません。
  • 「余剰資金」で行うこと: 投資に使うお金は、万が一失っても生活に困らない「余剰資金」に限定しましょう。生活費や学費、近い将来に使う予定のあるお金を投資に回すのは絶対に避けるべきです。特に、限られたバイト代を投資に使う場合は、この点を強く意識してください。
  • 正しい知識を身につける努力を続ける: 投資を始める前はもちろん、始めた後も継続的に学び続ける姿勢が重要です。 本や信頼できるウェブサイト、ニュースなどを通じて、金融や経済に関する知識を深めていきましょう。(参考:金融庁 若者の皆様へ

これらのデメリットや心構えを理解した上で、「それでも投資を経験してみたい」と考えるのであれば、次の章以降で解説する具体的な失敗パターンとその対策をしっかりと学び、慎重に第一歩を踏み出す準備をしましょう。

2. 【失敗パターン1】「よくわからないけど儲かりそう…」知識不足が原因の投資の落とし穴

アルバイトで稼いだ大切なお金を投資に回そうと考える高校生は素晴らしいですが、投資の世界は甘い言葉だけではありません。 特に、投資に関する知識が不足していると、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。「なんとなく儲かりそう」「友達がやっているから」といった安易な気持ちで始めると、大切なバイト代を失ってしまうだけでなく、精神的なダメージを受けることもあります。まずは、投資の基本的な仕組みやリスクを理解することが、失敗を避けるための第一歩です。

2.1 投資の基本を知らないまま始めてしまうリスク

投資はギャンブルとは全く異なります。 企業の成長や経済の動向を見極め、将来的な価値の上昇を期待してお金を投じる行為です。しかし、その基本を理解しないまま、「すぐに大金持ちになれるかも」といった期待だけで始めてしまうと、非常に危険です。

例えば、以下のようなリスクが考えられます。

  • リスクとリターンの関係を理解していない: 一般的に、高いリターンが期待できる投資は、それだけ高いリスク(損失の可能性)も伴います。「ローリスク・ハイリターン」を謳う話は、まず疑ってかかるべきです。
  • 投資対象の価値が変動する理由を知らない: 株価や為替レートなどは、経済状況、企業業績、政治的な出来事など、様々な要因で常に変動しています。その仕組みを知らずに投資すると、価格が下がった時にパニックになり、不適切なタイミングで売却してしまうなど、損失を拡大させる行動をとってしまいがちです。
  • 手数料や税金の存在を知らない: 投資には、売買手数料や信託報酬などのコストがかかります。また、利益が出た場合には税金がかかることもあります。これらのコストを考慮せずに利益計算をすると、思ったほど手元にお金が残らないという事態になりかねません。

投資を始める前に、最低限、投資の仕組み、リスクとリターンの関係、主な投資対象(株式、投資信託など)の特徴について学ぶことが重要です。金融庁のウェブサイトなど、公的機関が提供する情報も参考にしましょう。
参考:金融庁 NISA特設ウェブサイト「NISAを知る」

2.2 仕組みが複雑な金融商品を理解せずに手を出してしまう

世の中には、株式や投資信託以外にも、様々な金融商品が存在します。中には、非常に仕組みが複雑で、専門家でも理解が難しいものもあります。特に、高校生にとっては、以下のような金融商品はリスクが高いと言えるでしょう。

仕組みが複雑で注意が必要な金融商品の例
金融商品主なリスク注意点
FX(外国為替証拠金取引)レバレッジによる大きな損失リスク、為替変動リスク少ない資金で大きな取引ができる反面、予想と反対に動いた場合の損失も大きくなります。 24時間取引可能なため、生活リズムが崩れる可能性も。
暗号資産(仮想通貨)価格変動が非常に大きい(ボラティリティが高い)、ハッキングや流出リスク、法規制の不確実性短期間で価格が数倍になることもあれば、半分以下になることも珍しくありません。 取引所の破綻リスクなども考慮が必要です。
CFD(差金決済取引)レバレッジによる大きな損失リスク、追証(追加証拠金)発生リスクFXと同様にレバレッジを効かせられますが、株式、株価指数、商品など多様な資産が対象となり、それぞれの値動き要因を理解する必要があります。
仕組債など商品性が複雑でリスクを理解しにくい、早期償還や元本割れのリスクデリバティブ(金融派生商品)を組み込んでいることが多く、特定の条件を満たすと大きな損失が発生する可能性があります。

これらの商品は、「少ない資金で大きく儲けられる可能性がある」といった魅力的な側面が強調されがちですが、その裏には大きなリスクが潜んでいます。仕組みを十分に理解できない金融商品には、絶対に手を出さないようにしましょう。

2.3 情報収集を怠り、雰囲気だけで判断してしまう

投資判断を行う上で、情報収集は不可欠です。しかし、どのような情報を、どこから得るかが非常に重要になります。

高校生が陥りやすいのが、以下のようなパターンです。

  • SNSや動画サイトの情報だけを鵜呑みにする: インフルエンサーなどが紹介している銘柄や手法が、必ずしも自分に合っているとは限りません。発信者のポジショントーク(自分の利益のために特定の情報を流すこと)である可能性も考慮する必要があります。
  • 友人や知人の「儲かった話」に流される: 周囲の人が特定の銘柄で利益を上げていると聞くと、焦って自分も買いたくなるかもしれません。しかし、その人が買ったタイミングと、自分が買うタイミングでは状況が全く異なる可能性があります。
  • 「なんとなく良さそう」「流行っているから」で決める: 企業の名前を知っている、CMでよく見る、話題になっているといった理由だけで投資先を決めるのは危険です。企業の財務状況や将来性などをきちんと調べずに投資するのは避けましょう。

信頼できる情報源としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 金融庁や日本証券業協会などの公的機関・業界団体のウェブサイト
  • 証券取引所のウェブサイト(例:日本取引所グループ
  • 証券会社のレポートや分析記事
  • 企業のIR情報(投資家向け情報)
  • 信頼できる経済ニュースサイトや新聞
  • 定評のある投資関連書籍

複数の情報源から情報を集め、客観的に分析することが、雰囲気や一時的な感情に流されず、冷静な投資判断を下すために重要です。金融庁も、金融トラブルに関する注意喚起を行っています。
参考:金融庁 注意喚起

3. 【失敗パターン2】「カンタンに稼げる」は危険サイン!高校生を狙う甘い誘惑と投資詐欺のリスク

投資に興味を持ち始めた高校生にとって、「カンタンに稼げる」「すぐに儲かる」といった言葉は非常に魅力的に聞こえるかもしれません。しかし、そうした甘い言葉の裏には、知識や経験の浅い若者をターゲットにした悪質な投資詐欺やトラブルが潜んでいる可能性があります。大切なお小遣いやバイト代を失うだけでなく、思わぬ借金を背負わされたり、友人関係を壊してしまったりするケースも少なくありません。ここでは、高校生が特に注意すべき投資詐欺の典型的なパターンを見ていきましょう。

3.1 SNSでの甘い誘い文句に注意!「必ず儲かる」は嘘

InstagramやX(旧Twitter)、LINEなどのSNSは、情報収集や友人とのコミュニケーションに欠かせないツールですが、同時に投資詐欺の温床にもなっています。「#投資」「#副業」「#不労所得」といったハッシュタグで見かけるキラキラした投稿や、「スマホだけで月収〇〇万円」「誰でも簡単に稼げる投資法教えます」といったDM(ダイレクトメッセージ)には警戒が必要です。

特に、「元本保証」「絶対に損しない」「必ず儲かる」といった言葉は、金融商品取引法で禁止されている断定的判断の提供にあたる可能性が高く、詐欺を疑うべき強いサインです。高価なブランド品や札束を見せつけ、あたかも簡単に成功できるかのように見せかけるアカウントも多く存在しますが、そのほとんどは演出であり、実態とはかけ離れていると考えましょう。

安易に連絡を取ったり、個人情報を教えたりするのは非常に危険です。金融庁からも、SNS等を通じた「もうけ話」に対する注意喚起が出されています。怪しいと感じたら、すぐに返信をやめ、ブロックするなどの対応を取りましょう。

参考:SNS等での「もうけ話」に注意!(金融庁)

3.2 友人・知人からの紹介でも安心できないマルチ商法的な手口

「すごく儲かる話があるんだけど、一緒にやらない?」と、仲の良い友人や学校の先輩から誘われるケースもあります。身近な人からの誘いだと、「怪しいかも」と思っても断りにくいかもしれません。しかし、その背景にはマルチ商法(連鎖販売取引)が隠れている可能性があります。

マルチ商法は、商品やサービスを契約し、次に自分が他の人を勧誘して契約させると紹介料などの利益が得られる、という仕組みのビジネスです。投資と結びついた「モノなしマルチ」と呼ばれる形態もあり、実体のない投資話や価値のない情報、ツールなどを契約させ、友人を紹介するように迫る手口が増えています。

友人を紹介することでしか利益が得られないような仕組みや、高額な初期費用(入会金、商品購入代金など)が必要な場合は特に注意が必要です。たとえ友人からの誘いであっても、内容をよく理解できないまま安易に契約したり、お金を払ったりしてはいけません。人間関係が悪化するだけでなく、借金を抱えてしまうリスクもあります。

以下のような勧誘には注意しましょう。

怪しい勧誘の特徴注意点
「必ず儲かる」「簡単に稼げる」と強調する投資に絶対はない。リスクの説明がないのは不自然。
仕組みがよくわからない、説明が曖昧理解できないものには手を出さないのが鉄則。
友人や知人を紹介するように強く求められるマルチ商法の典型的な手口の可能性。
高額な入会金や商品購入が必要失っても困らない範囲を超えた投資は避けるべき。
契約を急かされる、断ると脅される冷静な判断をさせないようにする手口。きっぱり断る勇気も必要。

もしマルチ商法かもしれないと感じたら、一人で悩まず、家族や信頼できる大人、または消費生活センターなどに相談しましょう。

参考:連鎖販売取引(マルチ商法)に関する情報(消費者庁)

3.3 高額な情報商材やツール購入を迫られるケース

「このツールを使えば自動で利益が出る」「勝率100%の必勝法を教えます」などと謳い、高額な情報商材(ノウハウをまとめたPDFや動画など)やソフトウェア(自動売買ツールなど)の購入を勧めてくるケースもあります。

インターネット広告やSNS、セミナーなどで勧誘され、「今だけ割引」「限定〇名」などと契約を急かされることも少なくありません。しかし、その情報やツールが本当に価格に見合う価値があるのか、実際に利益を出せるのかは極めて疑わしいと言わざるを得ません。購入してみたら中身が薄かったり、サポートが全くなかったり、そもそもツールが正常に動作しなかったりするトラブルが後を絶ちません。

中には、「お金がない」と断ると、「消費者金融で借りればすぐに返せる」「分割払いも可能」などと、借金をしてまで購入するように迫る悪質な業者も存在します。投資で利益を得るどころか、高額な商材代金と借金だけが残ってしまうという最悪の事態になりかねません。

「簡単に大金が稼げる魔法」のようなものは存在しません。有益な情報やツールも世の中にはありますが、高額な料金を請求される場合は、その根拠や実績を慎重に見極める必要があります。少しでも怪しいと感じたら、契約する前に国民生活センターなどに相談することをおすすめします。

参考:「もうかる」と誘う情報商材や副業サポートのトラブル-安易に契約せず、うのみにしない!(国民生活センター)

4. 【失敗パターン3】周りがやってるから、すぐ儲けたい…焦りと感情に流される投資の失敗

友人やSNSで「投資で儲かった!」という話を聞くと、「自分も早く始めなきゃ」「乗り遅れたくない」と焦ってしまう気持ちは、多くの人が経験するかもしれません。特に、周りの影響を受けやすい高校生の時期は、こうした焦りや感情が投資の判断を誤らせる原因となりがちです。ここでは、焦りや感情に流されてしまうことで起こりうる投資の失敗パターンを見ていきましょう。

4.1 周囲の成功話に焦って飛びついてしまう

「友達が仮想通貨で一気に稼いだらしい」「あのインフルエンサーが勧める株が急上昇している」といった情報は、魅力的に見える反面、大きなリスクをはらんでいます。このような、周りの人が得をしている状況から取り残されることへの恐怖感は「FOMO(Fear of Missing Out)」と呼ばれ、投資の世界では特に注意が必要な心理状態です。

FOMOに駆られると、以下のような行動をとってしまいがちです。

  • 投資対象について十分に調べずに、話題性だけで飛びついてしまう(高値掴みのリスク)
  • 自分のリスク許容度(どれくらいの損失まで耐えられるか)を考えずに、大きな金額を投じてしまう
  • 短期的な利益ばかりを追い求め、長期的な視点を見失ってしまう

例えば、SNSで特定の銘柄が急騰しているのを見て、「今買わないと損だ!」と焦って購入したものの、その後すぐに価格が急落し、大きな損失を抱えてしまうケースは少なくありません。他人の成功はあくまで他人のもの。自分自身の目標や状況に合わせて、冷静に情報を分析し、判断することが重要です。

参考として、投資における心理的な罠については、以下の情報源も役立ちます。

4.2 短期的な値動きに一喜一憂し、冷静な判断ができない

投資を始めると、株価や仮想通貨の価格など、日々の値動きが気になってしまうのは自然なことです。しかし、短期的な価格変動に感情が大きく揺さぶられ、一喜一憂してしまう状態は危険です。

特に、投資経験の浅い高校生の場合、少し価格が上がっただけで「もっと上がるかも!」と欲を出して買い増ししたり、逆に少し下がっただけで「暴落するかも!」とパニックになって慌てて売ってしまったり(狼狽売り)することがあります。こうした感情に基づいた取引は、多くの場合、裏目に出ます

例えば、長期的な成長を期待して購入した株式が、一時的なニュースで少し値下がりしたとします。ここで冷静さを失い、「損をしたくない」という一心で売却してしまうと、その後の株価回復のチャンスを逃してしまうかもしれません。逆に、順調に値上がりしている時に、「もっと儲けたい」と冷静な分析なしに追加投資し、相場の天井で買ってしまう(高値掴み)リスクもあります。

投資は、本来、長期的な視点に立ち、冷静な分析に基づいて行うべきものです。日々の値動きに心を乱されず、事前に決めた投資ルール(例えば、「〇〇円まで下がったら売る(損切り)」「〇〇円まで上がったら一部利益確定する」など)に従って、淡々と実行することが、感情的な失敗を避けるコツです。

4.3 「損を取り返したい」という気持ちがさらなる損失を招く

投資に損失はつきものです。どんなに経験豊富な投資家でも、時には損をすることがあります。問題は、損失を経験したときに、「すぐに取り返したい!」という焦りや怒りの感情に支配されてしまうことです。

人間の心理として、利益を得た喜びよりも、損失を被った苦痛の方が大きく感じられる傾向があります(これは「プロスペクト理論」における損失回避性として知られています)。そのため、損をすると、「何とかして元本を取り戻したい」「損した分を取り返してプラスにしたい」という気持ちが強く働き、次のような危険な行動につながることがあります。

  • 損失を取り返そうと、よりリスクの高い投資(ハイリスク・ハイリターンな銘柄や、レバレッジをかけた取引など)に手を出してしまう
  • 値下がりした銘柄を、「いつか上がるはずだ」と根拠なく保有し続け、損切りができずに損失を拡大させてしまう(塩漬け)。
  • さらに資金を追加して、平均購入単価を下げようとする(ナンピン買い)が、さらに値下がりして損失が膨らむ。

一度の失敗を取り返そうと焦る気持ちは、さらなる失敗、しかもより大きな損失を招く可能性を高めます。損失が発生した場合は、まず冷静になることが大切です。なぜ損失が出たのかを客観的に分析し、必要であれば損切りを実行する勇気も必要です。「損切り」は、それ以上の損失拡大を防ぐための重要なリスク管理手法です。

投資における感情コントロールやリスク管理の重要性については、以下の情報源も参考にしてください。

以下の表は、感情的な投資行動のパターンとその対策例をまとめたものです。

感情的な行動パターン具体例対策例
FOMO(取り残される恐怖)話題の銘柄に焦って高値で飛びつく事前に投資ルールを決める、長期的な視点を持つ、情報源を鵜呑みにしない
短期的な値動きへの一喜一憂少しの値上がりで利益確定、少しの値下がりで狼狽売り投資目的を明確にする、冷静な判断を心がける、定期的な積立投資を検討する
損失回避性(損を取り返したい)損切りできず塩漬け、ハイリスクな取引に手を出す、無計画なナンピン買い損切りルールを設定・厳守する、冷静になるまで取引を休む、失敗から学ぶ姿勢を持つ

高校生が投資を始める際には、こうした感情的な罠があることを理解し、常に冷静な判断を心がけることが、大切なバイト代を守り、将来の資産形成につなげるための第一歩となります。

5. 【失敗パターン4】コツコツ貯めたバイト代が一瞬で? 少額投資ならではのリスクと注意点

高校生にとって、アルバイトで貯めたお金は、時間と労力をかけて得た大切な資産のはずです。「少額だから大丈夫」と軽い気持ちで投資を始めると、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。ここでは、少額投資ならではのリスクと、注意すべき点について解説します。

5.1 少額でも損失は痛い!バイト代が無駄になる可能性

投資には必ずリスクが伴います。たとえ投資額が1万円や数千円といった「少額」であっても、価値が下がれば損失が発生します。高校生にとって数千円の損失は、数時間から十数時間分のアルバイト代が一瞬で消えてしまうことを意味し、精神的なダメージは決して小さくありません。

「お小遣いの範囲だから」「なくなってもいいお金だから」と考えていても、実際に損失を目の当たりにすると、想像以上にショックを受けるものです。特に、初めての投資でいきなり損失を経験すると、投資そのものに対して強い苦手意識を持ってしまう可能性もあります。

投資を始める際は、必ず「余裕資金」で行うことを徹底しましょう。余裕資金とは、食費や学費、交際費など、近い将来使う予定のあるお金を除いた、当面使うあてのないお金のことです。生活に必要な資金や、失うと困るお金を投資に回すのは絶対に避けましょう。

5.2 株価ばかり気にして学業がおろそかになる本末転倒

投資を始めると、自分が投資した銘柄の株価や市場の動向が気になってしまうのは自然なことです。しかし、その気持ちが強すぎると、日常生活や学業に支障をきたす可能性があります。

  • 授業中も株価が気になり、スマートフォンばかり見てしまう。
  • 値動きに一喜一憂してしまい、勉強に集中できない。
  • 夜遅くまで市場情報をチェックしてしまい、寝不足になる。
  • 友人との時間や部活動よりも、投資を優先してしまう。

このような状況に陥ってしまうと、本来最も大切にすべき学業がおろそかになり、本末転倒です。高校生の本分は、学業を通じて将来のための知識や経験を身につけることです。投資はあくまでも、将来のための資産形成の一つの手段であり、学業や健全な学生生活を犠牲にしてまで行うべきではありません

対策としては、以下のようなルールを自分で決めることが有効です。

  • 株価をチェックする時間を決める(例:1日1回、寝る前だけ)。
  • 短期的な値動きに惑わされず、長期的な視点で投資を行う(つみたて投資など)。
  • 学業や部活動、友人との時間を優先する意識を持つ。

5.3 分散投資をせず、一つの銘柄に集中してしまうリスク

投資の格言に「卵は一つのカゴに盛るな」という言葉があります。これは、投資先を一つに集中させず、複数の対象に分けて投資する「分散投資」の重要性を示しています。

少額投資の場合、「資金が少ないから分散できない」と考え、一つの企業の株式や特定の暗号資産(仮想通貨)などに資金を集中させてしまうケースが見られます。しかし、これは非常に危険な行為です。もしその投資先が予期せぬ出来事(業績悪化、不祥事、規制強化など)で大きく値下がりした場合、投資した資金の大部分を失ってしまうリスクがあります。

少額からでも分散投資を行う方法はあります。以下に例を挙げます。

少額からできる分散投資の例
投資方法特徴メリット
投資信託専門家が複数の株式や債券などに分散投資してくれる金融商品。100円や1,000円といった少額から購入でき、手軽に分散投資が実現できる。つみたてNISAなどの制度も活用しやすい。
ミニ株(単元未満株)通常100株単位で取引される株式を、1株から購入できるサービス。数千円~数万円程度で有名企業の株主になれ、複数の銘柄に分けて投資しやすい。
ポイント投資買い物などで貯めたポイントを使って、投資信託や株式に投資できるサービス。現金を使わずに投資を体験でき、損失が出ても精神的な負担が少ない。分散投資の練習にもなる。

分散投資は、リスクを完全に無くすことはできませんが、特定の投資先の値下がりによる影響を和らげ、資産全体の値動きを安定させる効果が期待できます。金融庁のウェブサイトでも、資産形成における分散投資の重要性が解説されています。

参考:投資の基本(金融庁 NISA特設ウェブサイト)

大切なバイト代を守りながら、将来につながる投資経験を積むためにも、少額であっても分散投資を心がけるようにしましょう。

6. 【失敗パターン5】ルール違反になってない? 未成年が投資を始める前に確認すべきこと

投資は魅力的ですが、高校生が始める際には特有のルールや手続きがあります。これらを知らないまま進めてしまうと、思わぬトラブルに発展したり、せっかくの投資の機会を失ったりする可能性があります。ここでは、未成年者が投資を始める前に必ず確認すべきルールや手続きについて解説します。

6.1 親権者の同意なしに始めてしまうトラブル

高校生を含む未成年者が投資を行う場合、原則として親権者(保護者)の同意が不可欠です。これは、未成年者が単独で行った契約などの法律行為は、後から取り消すことができると民法で定められているためです。証券会社などの金融機関は、このようなリスクを避けるために、未成年者が口座を開設する際には必ず親権者の同意書や、親権者自身の口座開設などを求めています。

もし、親に内緒で年齢を偽ったり、何らかの方法で同意を得ずに口座を開設・取引したりした場合、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。

  • 口座の凍結・強制解約: 事実が発覚した場合、証券口座が凍結されたり、強制的に解約されたりすることがあります。
  • 取引の取り消し: 行った取引が無効とされる可能性もあります。
  • 親との信頼関係の悪化: 内緒で始めたことが発覚すれば、お金の問題だけでなく、親子間の信頼関係にも影響が出かねません。

投資を始めたいと思ったら、まずは正直に親権者に相談し、目的やリスクについて話し合い、理解と同意を得ることが重要です。隠れて始めることは、多くのリスクを伴います。

6.2 口座開設のルールや必要な手続きを知らない

親権者の同意が得られたら、次は証券口座の開設です。未成年者が利用できる証券口座は「未成年口座」や「ジュニア口座」などと呼ばれ、通常の口座とは異なる手続きや書類が必要になります。

多くの証券会社では、未成年口座の開設にあたり、まず親権者がその証券会社に口座を持っていることが条件となっています。その上で、未成年者本人の口座開設手続きを進めることになります。

口座開設に必要なものは、証券会社によって多少異なりますが、一般的には以下のものが挙げられます。

必要なもの主な内容・注意点
未成年者本人の本人確認書類マイナンバーカード、パスポート、健康保険証(+住民票の写しなど)
親権者の同意書証券会社所定の書類に親権者が署名・捺印したもの
親権者の本人確認書類運転免許証、マイナンバーカードなど
続柄を確認できる書類住民票の写し、戸籍謄本など(発行から一定期間内のもの)
マイナンバー(個人番号)未成年者本人と親権者両方のものが必要な場合が多い

これらの書類を準備し、オンラインや郵送で申し込み手続きを行います。手続きには時間がかかる場合もあるため、余裕をもって準備を進めましょう。また、証券会社によって未成年口座で取引できる金融商品が制限されている場合があるため、口座を開設する前に、自分が投資したい商品が取り扱われているかどうかも確認しておくと良いでしょう。

どの証券会社を選べばよいか迷う場合は、手数料の安さ、取扱商品の種類、アプリやツールの使いやすさ、サポート体制などを比較検討し、親権者と相談しながら決めましょう。

6.3 税金に関する知識不足(ジュニアNISAなど)

投資で利益が出た場合、原則としてその利益に対して税金がかかります。これは高校生であっても例外ではありません。年間の利益が一定額を超えると、確定申告をして税金を納める必要が出てきます。

具体的には、株や投資信託の売却によって得た利益(譲渡所得)や、配当金・分配金(配当所得)などが課税対象となります。アルバイト収入など他の所得と合わせて、所得税や住民税の計算が必要になるケースがあります。

ここで知っておきたいのが「ジュニアNISA」という制度です。ジュニアNISAは、未成年者向けの少額投資非課税制度で、年間80万円までの投資で得た利益が非課税になるというメリットがありました。ただし、ジュニアNISAの新規口座開設および新規投資は2023年末で終了しています。

2024年以降は、ジュニアNISA口座で保有している金融商品を、18歳になるまで非課税で運用し続けることができます。また、以前は18歳まで原則として払出しができませんでしたが、2024年以降はこの制限が撤廃され、いつでも(ただし全額一括で)払い出すことが可能になりました(払い出す場合は口座自体が廃止されます)。ジュニアNISAについて詳しくは、金融庁のウェブサイトなどで確認できます。

金融庁 NISA特設ウェブサイト:ジュニアNISAの概要

税金の仕組みは複雑であり、知らないうちにルール違反をしてしまうと、後から追徴課税などのペナルティを受ける可能性もあります。投資を始める際には、利益が出た場合の税金についても意識し、不明な点があれば親権者や、必要に応じて税務署、税理士などに相談するようにしましょう。

7. 【まとめ】投資の失敗を避けるために高校生が心に留めておくべきこと

高校生が投資を始めることは、将来に向けた良い経験になり得ますが、知識不足や「簡単に儲かる」という甘い誘惑、焦りは大きな失敗につながる可能性があります。SNSでの怪しい勧誘や複雑な金融商品は避け、仕組みを理解してから判断することが重要です。友人からの誘いでも安易に乗らないようにしましょう。

少額であっても大切なお金です。損失リスクや、投資に夢中になり学業がおろそかになる可能性も考慮しなくてはなりません。周りの成功話に焦らず、親権者の同意を得てルールを守り、ジュニアNISAなどの制度も理解した上で、まずは情報収集から慎重に始めることが、失敗を避けるための大切な心構えです。

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